WELCOME TO The Kampo Igaku Shimbun  ●創刊号(1996/11/25)――【1面】(1)
漢方医学は、2000年前に患者主体型医療を確立



line.gif 「インフォームド・コンセント」「全人医療」「改正薬剤師法」「かかりつけ薬局」…、すべてに可能性を秘める『漢方医学』

 1996年、「薬害エイズ」問題を転機に、日本の医療は大きな曲がり角を迎えた。
これまで何年も叫ばれ続けてきた「インフォームド・コンセント」「医薬分業」「全人医療」「患者主体」という言葉が、ついに、現実化へと動き出し始めたのだ。
 だが、「3時間待ちの3分間診療」から、急激な脱皮など、でき得るものではない。そこには、「試行錯誤」という試練が、必要不可欠となっている。
 そんな今、改めて「漢方医学」を見つめ直すと、なんと、2000年前から、患者を主体とした「全人医療」「原因療法」が確立されていた。
「漢方医学」と「西洋医学」の双方の長所を統合することができたなら…、21世紀は、患者主体の新医療時代を迎えることだろう。
(中村 斉)


「不定愁訴症候群」には、漢方が最適

 漢方医学の原典といえば、いまから約2000年前の中国古典医学書「黄帝内経」「神農本草経」「傷寒論」「金匱要略」(8面参照)など。これらの書物をひもとくと、患者主体の「全人医療」の思想が伝わってくる。病気を治すことが主眼ではなく、病人の心身全体のバランスを整え活性化することが、漢方治療なのだ。そして、現代医療におけるさまざまな目標重要課題を、はるか2000年の昔から、実現している所がある。
 たとえば、現在、治りにくい病気とされる「不定愁訴症候群」について考えてもらいたい。
 「不定愁訴症候群」は、「だるい」「痛い」「不快」など、患者本人には明確な自覚症状があるにもかかわらず、西洋医学での検査や診察では、数値に異常がなく「病気」としてとらえることができない。原因は不明、治療法も確立されていないことから、この病名がつけられている。「自律神経失調症」や「更年期障害」などがこの病気の代表例で、どこの病院に行っても、納得のいく治療が受けられないケースがほとんど。こうして症状が改善しないまま長期化するため、患者本人も「持病」と称して、なかば「あきらめている」のが現状だ。
 一方、漢方における治療では、病名とは関係なく、患者本人の自覚症状をもとに、全身の状態を把握し、バランスの崩れたところを見極める。そのうえで、とくに不快な症状を改善しながら、病気の本質的な原因を取り除くための漢方薬を処方するので(原因療法)、こういった「不定愁訴症候群」に対して、際立った改善がみられることが多い。
 まさに、西洋医学での不得意ジャンルを補うことができる代表例ともいえる。
 もしも、一般病院(西洋医学)の医師が「不定愁訴症候群」に対して、漢方医学をもって治療にあたることができたならば、患者は、どれほど助かるか、計り知れない。
もちろん、すべての病気治療に対して「漢方医学」が「西洋医学」より優れているといっているわけではない。外科手術や遺伝子レベルでの病気の解明、客観的検査結果による病原特定、安定した薬効などについてみれば、むしろ長所の方が目立つ。
 とはいうものの、「インフォームド・コンセント」「全人医療」「改正薬剤師法」「かかりつけ薬局」など、現在の医療の抱える重要課題を克服するためには、2000年も前から全人医療を実践し続けている「漢方的医療」から学ぶところは大きい。つまり、患者にあわせて西洋医学と漢方医学を使い分け、長所を活用しあえれば、理想的な医療体制が実現できるに違いない。
ただし、漢方的医療を行うためには、初診時に最低1時間以上のていねいなカウンセリングが必要。また、「漢方医学」を学べる教育機関が少ないなど、整備すべき点がたくさんある。
 弊紙では、患者主体の「全人医療」「原因療法」ができる治療法を「漢方医学」としてとらえ、全国の医療関係者に向けて、漢方医学に関する基礎知識やさまざまな最先端情報を発信。これを、21世紀の新医療時代への提案とし、2020年、4人に1人が65歳以上という「超高齢社会」を迎えるまでに、市民が気軽に「かかりつけ薬剤師」「かかりつけ医師」に健康相談ができる世の中をつくっていきたい。


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