●創刊号(1996/11/25)――【6面】◆日本漢方生薬製剤協会・三谷康人会長へInterview
![]() 会長 三谷康人氏 ▼昭和 4年11月8日生まれ ▼27年 4月 鐘淵紡績(株)(現カネボウ)入社 ▼53年 5月 カネボウ薬品(株)取締役就任 ▼平成 4年 6月 同代表取締役副社長 ▼6年 1月 日本漢方生薬製剤協会会長就任 ▼6年 6月 カネボウ薬品(株)代表取締役社長 ▼7年 6月 同会長。現在に至る |
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5年後の漢方製剤業界が目指すべき「道」 漢方製剤の売上は93年をピークに横這いが続いている。漢方ブームといわれ、売上げが年々倍増してきた漢方製剤は、ここにきて大きな転換点を迎えたと言っていい。西洋医学を中心とした現在の薬品に見直しが迫られている今、漢方製剤業界はどのように変わっていくべきなのか。 日本漢方生薬製剤協会・三谷康人会長に5年後の漢方生薬製剤業界の目指す姿、そのための取り組みについて聞いた。 (太田 聡) 漢方医学の理解を深めるためには 漢方製剤は93年まで急成長を続けたあと、不況と共に低迷。95年には微増ながら盛り返したものの、小柴胡湯の副作用問題が取りざたされたことなどで、再び下降した。漢方製剤が節目にきたのではないかと思っている。副作用問題にしても正確な知識が普及していればさけられた、そうした誤解やあやふやな情報で全体の出荷高が左右されるのは、日本における漢方製剤の足腰の弱さを示している。 日本漢方生薬製剤協会(略称日漢協、以下日漢協)としても、足場固めを行い、漢方製剤の医療における位置づけを確固たるものにしなければならないと考え、今年5月に「21世紀の漢方のあり方に関する懇親会」を発足。毎月一回懇談会を開き、解決しなければならない課題、そのための方策について検討している。 科学的裏付けの必要性 ヨーロッパ、特にドイツでは薬品全体に占める生薬製剤の割合が非常に高く、認識も深い。サリドマイド問題を契機に、より自然に近い医療を目指した結果だ。こうしたヨーロッパの取り組みと、日本の製薬業界の取り組みではいったいどこが違うのか、改めて考えてみる必要がある。たとえば、市井では漢方に関する関心は確実に高まっているのに、正しい情報が伝わっているとはいいにくい状況。我々製薬メーカーも大いに反省すべき点だ。 そこで、まず漢方の伝承的にいわれている効果に、現代の科学による裏付けを加える事が必要。現代の医療に受け入れられるためには、科学的根拠は必要不可欠な要素。使う人に自信を持って使ってもらうためにもぜひ推進していかなければならない。現在再評価委員会を設け、8つの漢方製剤について再評価を進めているところだ。 医育機関での漢方教育の重要性 現代の医療は専門化がどんどん進み、専門以外のことは分からないという事が増えてきた。一方で、こうした専門性を見直す動きが出てきて、まず全体的に見て、漢方を含めどのような治療がよいかを考える。たとえば、アレルギーや不定愁訴、心身症に対しては、漢方薬が有効なことがわかっているから、漢方薬による治療をまずしてみる。また、漢方による治療を第一義としないまでも、たとえばステロイドのアキレス腱である副作用の問題も漢方薬である程度押さえられるし、手術後の体力回復など漢方の果たすべき使命がある。ただし漢方を処方するためには、漢方の知識の医療機関への普及が欠かせない。医療機関での漢方教育はまだ始まったばかりだが、徐々に進展しており、今後大学教育の場で漢方の普及が進んでいくだろう。 病名漢方からの脱皮 漢方はだんだん多くの医療機関で使われるようになっているが、いわゆる「病名漢方」の域を脱していないと思われる。私はこの点が、漢方に対して多くの医療機関がより深い知識を持つようになるための大きな鍵だと考えている。明治以来日本の医療は西洋医学のみが正統とされてきた。これは教育機関においても、実際の治療の現場においてもだ。まず、漢方医学という西洋医学とは全く異なる医療が存在することを知らしめなくてはならない。そのためには、行政による働きかけも必要不可欠のものとなるだろう。ヨーロッパではすでに、基準作りが進められており、生薬、ハーブの医療における位置づけが今よりさらにもっと明確になるだろう。日本でもこれに習って、行政を巻き込んで基準作りを進めていかなければならない。 東洋と西洋医学の真の統合 5年後の漢方業界はもっと質的向上が図られるだろう、またそうでなくてはならない。そのためには科学的裏付けの研究推進、教育の普及が欠かせない。現在我々メーカーサイドでは、再評価制度などの取り組みをスタートしているが、大学や医療機関での取り組みがもっと活発になってくる。教育に関しては、日漢協でも教育研修委員会を設け、来年から漢方医の資格認定制度を始める計画。漢方に関するすべての医学教育を可能な限り徹底していく。 日本でもし、本当の漢方医学が医療現場に行き渡ったら、それは東洋医学と西洋医学の真の融合といえるかもしれない。中国においても漢方医として医師の資格を取得すると、漢方による治療しかできない。ましてや西洋には漢方医学はほとんどない。西洋医学の即効性、東洋医学の体質改善の考え方が融合したら、医学の面で新しい境地を開いたといえるだろう。漢方薬は、これからの高齢化社会を考えた場合、有効というより必要不可欠な医療だ。真に漢方による健康の恩恵を広めるためには、もっと多くの本物の漢方が必要だ。そのためには我々メーカーとして、この転換期にどれだけの事ができるかが重要になってくるだろう。 |
