●第2号(1996/12/25)――【2面】
「第29回日本漢方交流会全国学術総会・京都大会」(1)

ストレス症候群に
漢方医学が有効に作用


大会プログラム

【特別講演】
◆「日本漢方の歩みと薬局漢方の展望」
国際東洋医学会会頭 坂口弘氏
◆「正倉院薬物について」
東京大学名誉教授 柴田承二氏

【会員発表】
(1)ストレスによる全身の自律神経失調症
近畿鍼灸漢方研究会・かんぽう会 川邊隆子氏

(2)気力が無く眠くて仕方がない症状に対する真武湯の有用性
高松漢方研究会 真鍋立夫氏

(3)更年期障害と便秘
京都漢方研究会 高橋幸男氏

(4)「百合病」と百合を使用した治験に関する考察
東京漢方教育センター 三宅仁一氏ほか

(5)阪神・淡路大震災におけるストレスと漢方による治療経験
東京漢方教育センター 辻内琢也氏

(6)気は病から −ストレスとこころとからだの考察−
日中医薬研究会関西支部 田中英樹氏ほか

(7)ストレス症候群に対する漢方について
−無形の「気」を有形の「水気、血気」に−
日中医薬研究会関西支部 毎原昭子氏ほか

(8)気剤「香蘇散」の効果とその活用範囲の拡大
広島漢方研究会 小林宏氏

(9)ストレス社会の副産物
広島漢方研究会 桃原泰誠氏

(10)登校拒否の女性の2例について
かんぽう会 村上清尚氏

(11)精神的ストレスによる糖尿病とその併病の十二脂腸潰瘍、胆石、腎臓結石、視力低下、全身のおできなどを一服の煎じ薬をきっかけに完治した実例
東海漢方協議会 苅谷賢治氏

(12)「ストレスと鍼灸治療」(紙上発表)
かんぽう会 山本恵美子氏

【シンポジウム】
◆「民間薬の臨床応用」
前日本東洋医学会民間薬調査委員長 松下嘉一氏
◆「民間薬の供給と品質」
大阪大学薬学部助教授 米田該典氏
◆「民間薬の科学的評価」
(財)生産開発科学研究所天然薬物資源開発研究室室長 山原條二氏
◆「民間薬の薬局店頭での臨床治験と今後の課題」
日本漢方交流会学術委員会民間薬部門長 近藤繁子氏


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 1996年11月30日〜12月1日、日本漢方交流会は「第29回日本漢方交流会全国学術総会京都大会」を開催。
 坂口弘博士(国際東洋医学会会頭)による特別講演や、1200年間薬効を保っていたことで話題になった正倉院薬物についての講演(柴田承二東京大学名誉教授)の他、大会テーマ「ストレス社会と漢方」に沿い、ストレス症候群に有用に作用した漢方的治療による臨床例の発表が相次いだ。その要旨を紹介する。(太田 聡)






◆治癒例(1)

「ストレスによる全身の自律神経失調症」
●近畿鍼灸漢方研究会・かんぽう会 川邊隆子氏発表

【概況】
 「心臓の調子が悪い」と言うだけで、なにを聞いても症状を話さない中年男性に対し、徐々に症状を聞き出し完治させた例。

【経過】
 極度の精神不安定に因る全身の自律神経失調症で、心臓内科に入院していた患者。輸入牛黄、麝香製剤丸薬を投与し、息切れが取れたのをきっかけに、徐々に症状を話し始める。初めての来局から五ヶ月目に、辛抱強く聞き出したところ、臍動悸、喉が詰まる、腸が引っ張られる感じ、痺れ、悪寒、手足の痙攣、脇、みぞおちの痛みなどさまざまな症状があることが判明。煎剤を面倒がる患者を説得し柴胡桂枝湯を与え、まず胸の動悸を取る。以後、変方を繰り返し一つ一つの症状を緩和。服用一年数ヶ月後、最後まで残っていた腸を引っ張る感じが取れ、煎剤からエキス剤に切り替え、症状は一通り改善し、再発もしない、さらに半年後廃薬。休みがちだった会社も毎日普通に通えるようになった。
 完治後、遠方から家族総出で来局し、奥さんの肥満対策の相談にくるほどに信頼されている。



◆治癒例(2)

「気力が無く眠くて仕方がない症状に対する真武湯の有用性」
●高松漢方研究会 真鍋立夫氏発表

【概況】
 会社員の中年女性。食欲が無く、無気力、熟睡できず常に眠いと訴える。病院では、軽い貧血と診断される。

【診断】
 四診の結果、だるさは脾の不調により痰飲が滞り、津液の循環が停滞していると判断(食欲がない、空腹を感じない、水太りの容貌などから判断)。

【治療計画】
 痰飲が多く、水毒を取るため六君子湯を主に、脾と腎の陽気を立て直すため真武湯を、さらに、胆気の停滞も考えられるので香附子六君子湯も用意した。生卵に薄口醤油を垂らして飲む民間療法を同時に進めた。

【結果】
 真武湯を第一段として用い、初回4日分、2回目7日分で完治。六君子湯、民間療法は「効かないようだ」という本人の求めで、体調が悪くなると真武湯を服用するようにしている。



◆治癒例(3)

「更年期障害と便秘」
●京都漢方研究会 高橋幸男氏発表

【概況】
 便秘の悩みで来局。市販の漢方薬を使うと下痢をすると言う40代の女性。頭がのぼせる、下半身の冷え、頭痛、肩こり、耳鳴り、不眠などの症状があり、家庭の悩みがあることがわかった。

【診断】
 患者が便秘になるのは更年期による痙攣性の便秘と判断。この場合は弛緩性の便秘に効果のある便秘薬は効かない。ストレスから更年期の低年齢化も考えられ、悩みがある、市販の漢方便秘薬で下痢をしたということから判断した。

【結果】
 痙攣性の便秘に効果がある加味逍遙散を用い、2週間後にほぼ改善。他に、同様の著効例2例を認めた。

(以下次号につづく)



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