●連載第2回−1997/8/25発行・第9号2面−
漢方の真骨頂は、独自の物差し「虚実」にあり
漢方における虚実【その1】

絶対守るべきルール・・・<1>

●虚実に対する治療原則

1.
虚に対しては補う=補法(ほほう)

足りない分を補う方法
 例えば血虚なら血を増やす力を持つ処方を、気虚なら気の力を充実させるもの、腎虚・肝虚なら腎や肝の力をつけるものを、しかも身体に優しい処方を。鍼なら細い鍼で浅く・優しく刺し、抜鍼後は皮膚を指で軽く押して鍼の後をふさぐ方法を行います。

2.
実に対しては瀉す=瀉法(しゃほう)

多すぎる分を除去する方法
 但し、臨床の現場では要注意。実際には「小柴胡湯で肝炎の患者が死亡した」と騒がれるように、虚実をきちんと見究めた上で、「本当に実だから瀉法を」と判断して行わないと誤治となります。
 鍼なら太くて長い鍼で強制激を与え、抜鍼後は皮膚を押さず気を抜く方法を行います。

●虚実@

虚に対して瀉方(強い方法)は危険。迷ったら補法からスタート

鍼灸では脈診で虚実を判定しもし実(瀉すべき)と虚(補すべき)がある時は、まず補法を行い、後で瀉法を行うこと

虚実は変化するもの。常に虚実の程度をチェックすること

line.gif  漢方医学の勉強は「陰陽」から入るのが基本。漢方の根底を流れる哲学思想が、森羅万象を陰と陽に規定する2極論から成っているからだ。
 ところが、敢えて「虚実」から語るのが古村流。陰陽ももちろん大切だが、実際の現場では「虚実」の見極めが最重要になる。そこで、優しい漢方第2回は「虚実─(1)」。まず、虚実とはなにか、を知っていただく。


(1)虚実(きょじつ)
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 漢方を学ぶとき、普通は陰陽説から始まります。でも、私は2冊目の本の出版に向けて原稿を書いていて『”虚実”の考え方こそが、漢方独自の最も優れた捉え方だ』と気付いたのです。陰陽説も五行説もバランスを大切にします。バランスとはすなわち虚実のバランスだと気付いたのです。
 ですから、私は漢方を学ぶなら、まず虚実の考え方をしっかり身につけることが近道だと思うのです。

<虚実とは>
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 丁度よい状態・正常な状態を平(へい)と言い、それに対して不足・弱い状態を虚(きょ)、過多・強すぎる状態を実(じつ)と言います。
 虚も実も病的ととらえるのです。つまり、過不足どちらも片寄っているから正常ではないという考え方です。
 この判断基準は昔から「過ぎたるは及ばざるが如し」という言葉があるように、当然のこと。でも、医療においてはなぜか忘れられているのです。
 私は「漢方の健康観はバランスだ」と痛感します。
 陰陽も虚実も五行説の相生・相剋も気血水も、全てバランスがとれていれば健康を維持できるのです。そして陽に傾けば陰を用い(夏に瓜類)、陰に傾けば陽を用い(冬に根葉類)というように、自然にそのバランスがとれるようになっているのです。
 それを現代の文化的な生活が狂わせてしまい、病気を増加させ治りにくくしていると思うのです。
 虚実に対しても、バランスをとる方法があります。その最も基本的なことをお伝えします。

<体力の虚実と漢方薬の虚実>
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 体力のある状態が「実」・体力のない状態が「虚」です。身体の状態が「実」なのか「虚」なのかによって使う漢方薬が異なってきます。
 体力に「虚実」があるように、処方にも「虚実」があります。体力のある実の時には強い薬{実}、体力のない虚の状態では穏やかな薬{虚}を。体力に見合う薬を使うのがルールです。
 例えば小柴胡湯を肝臓病の患者さんに処方して死亡させた例がありましたが、小柴胡湯はかなり強い薬。肝臓病の中でも、かなり進んで身体が弱っている虚の人に処方すると、こういう事故が起こるのです。
 この例を引き合いに「漢方薬にも副作用がある」と言う人もいますが、副作用と言うより、「使い方を誤った」と言うべきでしょう。

<虚実の見分け方を学ぶには>
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 疲れ易さ・声の大きさ・動作の他、舌診・脈診・腹診・具体的な症状などで病人の虚実を測ります。虚実の見究めは矢数道明先生の「漢方処方解説」などの専門的な本を参考にしてコツコツ学び、身につける必要があります。病名、症状だけで処方を選ぶことは絶対に避けるべきで、必ず症状の虚実(例えば便秘・下痢・腹痛・痛みなど)や、精神状態・性格の虚実及び処方の虚実をチェックしてほしいものです。


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