●連載第3回−1997/9/25発行・第10号2面−
陰陽のバランスは自然のバランス
●漢方の最も基本的な考え方──陰陽【その1】

絶対守るべきルール・・・<2>

●陰陽に対する治療法則

1.
陰に対しては陽を

 冬は体温より温かい物を口にすること。やむを得ず冷たい物を飲食するときは、同時に暖かい物を食べた上、夜、お風呂でびっしょり汗をかいて暖まる事。

2.
下半身(特に足元)は必ず陽に

 赤ちゃんも子供も大人も、靴下はいつもはく事。足がほてって靴下をはいていられない人は”陰極まれば陽となる”という逆転現象。つまり、冷えすぎてほてりを生じているのですから、入浴時、湯船の縁に腰掛けて、じっくり足を温めて下さい。

陰陽(1)
★衣----
冷やさぬ様に。夏のクーラーと冬の寒さ対策がポイント

★食----
手で触ってあたたかい物を口にすること。冷たい物を摂る時は、熱い物と一緒に

★住----
クーラー・シャワーは要注意。その日の冷えは、その日に取る工夫を

line.gif  漢方における「陰陽」はまさに、考え方の全ての基になる「金科玉条」だ。
 それほど大切な陰陽説。しっかり身につけなければ漢方を知ることは出来ない。
 しかし、基本は至って簡単。森羅万象を陰と陽に分け、陰には陽を、陽には陰を用い、常にバランスを保つことである。漢方に限らず、陰陽の理論を深く知れば、自ずと自然の仕組みが絶妙なバランスを保って存在していることに気付くはず。
 さて、漢方にとって最も大切なこの陰陽説。大自然の摂理などというと小難しくなりがちだが、古村流なら「なるほど納得」。難しい哲学を持ち出さなくても、身近なところから、生活の中から陰陽を見ることが出来ます。


(2)陰陽(いんよう)----その1
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 33年前に漢方と出会い、初めて学んだのが陰陽説でした。
そして、臨床家として、女性の漢方家として漢方薬・鍼灸・漢方美容・漢方食事法・漢方心理療法----と、 トータルに漢方だけで取り組んでいると、この『陰陽説』の存在の大きさを痛感します。
 わたしの1冊目の本「どんな病気もみるみる治る 漢方流食生活」のメインテーマは、「冷えは万病のもと」。更に言うなら「冷えのぼせは万病のもと」です。
 これは「上熱下冷」、つまり「上が陽・下が陰に片寄っている病的状態です。
 私は祖母に、常々「足を冷やすな」とうるさく言われました。短パン(ショートパンツ)が流行した大学時代から今日に至るまで、ソックスやパンストは必ずはいています。そんな私から見ると、素足でいる人の多さと、それによる冷えが原因で体調を崩している人の実態に胸を痛め、それを世間一般の大勢の人に伝えられない自分の無力を痛感します。
 そこで、私が説く陰陽説----それは、より日常生活に密着した実感を伴う陰と陽から入る方法です。店頭で素人(?)がウンウンとうなずいてくれる陰陽説です。
 皆さんも、こんな風に漢方を学べば、漢方って身近でおもしろく、すぐに応用出来るという事を、患者さんやお客様にお伝えできると思います。

<気候と冷暖房の陰陽>
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 夏の暑いときは、クーラー又は扇風機のありがたみを実感します。昔なら扇子とうちわ? 冬の寒い時は、ストーブやエアコンの暖かさにホッとし、伸び伸び出来ます。
 時代劇を見ていると、外は雪なのに、板の間、障子、素足、火鉢----。寒かったろうな、と思います。だから冷えて寿命が短かったのかな(おっと、これは冷え=寒さ=腎虚=老化現象が進む=五行説の捉え方でしたね)なんて、全て漢方の目で見てしまう私です。
 ここで言いたいのは、『夏の暑さ=陽に対しては冷たい陰を、冬の寒さ=陰に対しては暖かい陽を用いて、陰陽のバランスをとることが自然で当たり前』、という常識をしっかり覚えてほしいという事です。

<衣類の陰陽>
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 夏の暑さには陰を、冬の寒さには陽という常識を踏まえて、現代人の衣類を点検してみましょう。
 夏の暑さ(陽)に対し、クーラーの陰でプラスマイナス=0の状態を作り、さて、その中での服装を思い出して下さい。”夏仕度”つまり陰性の身なりです。夏向きです。室温は夏(陽)ではないのに陰で応じています。だから冷えます。
 冬はどうでしょう。保温性に優れたウール(羊毛)が陽性の身仕度です。ウールのセーター、ウールのズボンなどが当然です。それなのに、木綿のジーンズ、木綿のソックス、そして木綿のTシャツetc これは非常識なのです。
 私は店頭で、冬なのに上半身はセーターにダウンジャケット、下半身はジーンズと綿ソックスの人に向かって「夏もこの仕度で過ごして下さいネ」と言います。相手はけげんな顔をします。「このジーンズと靴下は夏も冬も同じでしょう。だから上半身も夏冬同じものを着たら?」と皮肉たっぷりに言います。
 気づきましたか。夏は陰、冬は陽を。特に下半身は陰の部位なので冷えやすい。だから、特に冬の下半身の保温は大切なのです。
 これが、陰陽説の具体化です。

<入浴の陰陽>
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 夏はシャワーという人が多いですね。シャワーは”冷える”ということをご存じ?
 皮膚表面だけお湯の”陽”に触れるシャワーは、しばらくの間は汗ばみます。これは、皮膚表面の知覚神経が”熱い”をキャッチして、発汗=放熱する現象です。が、体内はどうでしょう。クーラーの中で過ごし、冷たい飲み物・食べ物を摂り込んだ身体は冷えています。芯まで冷えているのに表面だけ熱い思いをしているのですから、丁度、冷凍のコロッケやトンカツを高温の油で揚げ、表面だけきつね色・中は生状態というのと同じです。
 夏と言っても、現代人の身体は「陰」になっています。湯船につかって芯まで温めて陽にする──つまり、”その日の冷えはその日に取ろう”と心がけないと、便秘、生理痛、不妊症、流産、坐骨神経痛、膀胱炎、寒冷蕁麻疹などの冷えに因る病気で苦しむことになります。

<食生活の陰陽>
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 ”旬”という言葉が死語になりつつあります。旬とは陰陽説の考え方です。
 天地の陰陽のバランスの中で、生物は生きています。動物も植物も決して人間に食べられる目的で生きている訳ではありません。各々が大自然に合わせてバランスを保って、自分の生命を維持しているのです。それを人間が口に入れ、生命を維持しているのです。
 夏野菜は、外気の陽に対し、自らは陰性となってバランスをとっているので、人間が夏に食べると身体が涼しくなり(陰)、夏の暑さ(陽)に耐えられるのです。
 逆に冬野菜は、外気の陰に対して、自らは陽性となっているので、私達がそれを食べ、陽を補って冬の陰に負けないでいるのです。
 冬なのに、ビニールハウスで作った夏野菜(陰)を食べたり、冷たいビールやジュースなどを飲む現代人には、陰陽のバランスを無視したツケがまわっています。
 更に”身土不二”と言って、自分が住んでいる所の物を食べることが大切という考えがあります。これは、3月末には海開きという沖縄と、5月上旬でも雪が降ることもある北海道の陰陽の度合いを考えると、北海道の人がストーブを焚きながら沖縄のレタスを食べるのは誤りという事がわかると思います。
 現代人の食生活の陰陽ほど、非常識なことはないと思います。
 9年前、80歳の女性が40度の高熱が続き、麻黄附子細辛湯で平熱になったのに、数日後、禁止していた冷たい缶ジュース1本で、再び発熱したケースがありましたが、これも陰陽説です。こんなレベルで考えられるように、しっかり学びましょう。



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