●連載第4回−1997/10/25発行・第11号2面−
人体の法則性を明かす漢方の方程式「五行説」
●最も応用範囲が広い基礎理論──五行説【その1】

臓と腑は何故ペアになっているのか?


風邪を引く(肺・鼻)


下痢・便秘(大腸)

風邪を引くと下痢や便秘になりやすい。これも漢方なら「五行説」で説明することが出来ます。
line.gif  徹底した分類学を基本とする西洋医学と異なり、個の特殊性を重視する漢方では、患者一人一人に対して、最低でも二百処方、さらに、加味方や合方を合わせると数百もある中から、最適の一つを選び出すことが必要になってくる。
 このためには陰陽論だけでは不十分。統計や分析が難しい漢方で、常に最適の治療方針を導き出すための方程式として考え出されたのが、「五行説」だ。
 ところが、この五行説がくせ者。五つのグループに分かれることは教わるけど、いったいどういう理由で分類されているのか、ということになると、一転難解な哲学的説明になってしまう。そこで、我らが古村先生の登場です。この難解な五行説をいったいどのように喝破してくれるのでしょうか。


(3)五行説(ごぎょうせつ)--その1
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 『五臓六腑にしみわたる』とか、『肝胆相照らす』という言葉がありますね。内蔵・五官・身体の各部位・感情・色・味・季節・食物・声等を、この五臓(肝・心・脾・肺・腎)を中心に5つのグループに分けて考えるのが五行説です。
 森羅万象を陰と陽の二つに分けて考える陰陽説だけでは不十分とのことで、木・火・土・金・水の5つの性質に分類してとらえようというものです。
 前回の陰陽説が、病気や性格・人づきあい・日常生活に広範囲に応用できるのと同様に、五行説も臨床上・人生上、もっともっと具体的に応用できます。
 古代中国の人が、小自然である私達の身体や心と大自然を鋭い観察力でキャッチして、法則性を見いだしたこの五行説は、単に五行色体表を暗記している人には分からない、感激・感動を覚える程、素晴らしいものです。
 臨床に於いては、私が大切に思っている5つの基礎理論の中で、最も利用価値があり、最も応用範囲が広い、最も奥深いとらえ方だと思います。それ故に、五行説の各々のグループに対する知識をしっかり身につけた上で、相生(そうぜい)・相剋(そうこく)関係のとらえ方を身につけてほしいものです。
 そうすると、どんな病人が目の前に座っても、初めて聞く様な病気に出くわしても、漢方的な診断=漢方の治療法が必ず発見できます。
 私達、漢方家に助けを求めて来店される人達は、何故こういう状態になっているのか、どうしたら治るのかを知りたがっています。その点を漢方的にきちんと説明すると、「こういう説明は初めてです。成る程と納得出来、安心しました」と、口々に言います。
 理解→納得→安心→治療に励む→よい結果が出る→喜ばれる・感謝される→私が”漢方”に感謝する------。こんな喜びは最高だと思いません?
 その為には、しっかり具体的に学んで下さい。身につけて下さい。どこからでも応用できるほど、消化吸収して下さい。
 どんな訴えに対しても、漢方理論で明解にとらえられれば、心の底から快感を感じます。漢方の威力を発揮できる!! という喜びです。そして「お陰様で」の言葉を伴う笑顔に出会えます。
 そんな私の熱い思いを伝える為の第一歩、五臓と六腑が各々、何故ペアを組んでいるのか──というところからお伝えします。

★{臓=陰}と{腑=陽}がペアになっている
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 五臓(肝・心・脾・肺・腎)の臓は蔵、つまり貯蔵の意味を持ち、動きがないので陰に属す。六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱)は、管の様に中を通過するから動きがあり陽に属す。
 昭和40年、大学一年の時、漢方研究部でこの様に習いました。
 一時、屁理屈を言う人に、肺は空気を、心臓は血液を、腎臓は尿を通過させるではないか----。と言われたことがありますが、昔の人が”臓”とつけた深い考え方を素直に受けとめる私は、臨床経験を積むにつれ、理屈は抜きにして五行説全体に納得して、素晴らしさに感動しています。

★何故これらがペアになっているのか
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(1)木=肝・胆
 昔から「肝胆相照らす」という言葉があり、「紙の表裏」の様な関係とも言われています。
 解剖学的にも、肝臓と胆嚢は密接な関係なので、誰もが納得します。

(2)土=脾・胃
 これは”消化”という点で共通の役目をするととらえます。

(3)水=腎・膀胱
 これは泌尿器の仲間。腎臓で尿を作り、膀胱に溜めて排泄するという連携プレーの相棒です。

(4)金=肺・大腸
 肺は呼吸を通じて大気につながり、大腸は肛門・排泄を通じて大気につながっている、という共通点故にペアになっていると学びました。
 頭では理解していても、なにかピンとこなかったのですが、20年程前、鍼灸治療中に、肺虚の人に対し肺を補う穴に置鍼(鍼を刺したまま放置する手技)をしている時、患者さんのお腹が「ゴロゴロ、キュー」と鳴り出しました。肺の力をつける穴の刺激で、連動式に大腸も活発に動き出したのです。また、痔の人の治療穴に肺経の穴があります。そんな体験から、私自身ナルホドと思って感激しています。
 また、臨床上、金=鼻・肺・皮膚・大腸の症状が、同一人物に重複して出るのを見ても、納得出来ます。

(5)火=心・小腸
 最もピンとこなかったペアです。どうしても腑に落ちずにいましたが、ある時、「両方ともストレスの影響をモロに受ける」という言葉に出会いました。緊張や驚き・不安・ワクワク----、そんな心情の時、心臓はドキドキします。良くも悪くも、心に負担がかかるとドキドキと正常ではなくなる心臓。一方、登園・登校拒否児が「お腹が痛い!!」と押さえるのはおへその下、下腹部です。そこには小腸があります。
 また、ストレスが限界を超えると、腸内の環境が 善玉菌<悪玉菌 となり、様々な病気の原因の一つになるという説もあり、心・小腸は共に精神面と深くつながっていると言えるのです。



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