●第3号(1997/1/25)――【11面】ハーブ&アロマテラピー『アロマの研究』
ここまで分かってきたアロマテラピーの効果

●東邦大学名誉教授
医学博士
鳥居鎮夫氏

1948年名古屋大学医学部卒
1955年東邦大学医学部助授
1972年同教授
1990年同名誉教授
★大脳生理学の権威として知られる



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 さて、ここまで香りが人体にもたらす影響の科学的な考察を進めて参りましたが、一つ厄介な問題が残っています。
 それは個人の「好き・嫌い」という嗜好に由来する影響です。
 たとえば海の近くで育った私は、磯の香りを嗅ぐとよい気分になります。子供の頃の懐かしい思い出が思い起こされるのでしょう。
 ところが、たとえば海でおぼれた経験を持つ人がいたとしたら、磯の香りを嗅いだだけで嫌悪感にさいなまれることでしょう。
 香りがもたらす精神的な効果は人それぞれで、人体生理というより、その人の経験や生活に関わることが大きいからです。ここら辺が香りによる人体への影響を調べる上での難しい点です。
 しかし、好きな香りを嗅いだときと、嫌いな香りを嗅いだときの人体に起こる変化はある程度把握することが可能です。
 そこで私は脳波を使った実験を試みました。
 脳波にはアルファ波、ベータ波などがあることは知られています。一般に、アルファ波は脳がリラックスしているとき、ベータ波は脳が活発に活動しているときに出るといわれます。
 この性質を応用し、好きな香りを嗅いだときに、アルファ波が右脳、左脳どちらかに出ているかを調べました(注1)
 この結果、被験者本人が好きだといっている香りを嗅がせたときに、一様に右脳からアルファ波が出て、逆に嫌いな香りを嗅がせたときには左脳からアルファ波が出ることがわかりました(注2)
 このことから、好きな香りを嗅いだときには感情の高ぶりが押さえられ、理性脳が活発に働き、嫌いな香りを嗅いだときには感情が高ぶることがわかりました。
 この実験では、脳のどの部位からどのぐらいの波長のアルファ波が出ているかで、精神の状態を見ることが可能です。
 たとえば難しいことを考えているとき、音楽を聴いているとき、絵を見ているときなどでアルファ波の出ている部位、波長が変わるからです。
 これを突き詰めていけば、特定の香りに対する脳の反応について知ることができるでしょう。しかし、そのためにはまだこれからの研究成果を待たなければなりません。 (つづく)




注記
1)「右脳」「左脳」
右脳は感情脳とよばれ、感性を司り、創造的な仕事をする。左脳は理性脳と呼ばれ、理論的に仕事をする。たとえば、よい香りを嗅いだときに、この香りを「好き」か「嫌い」かを判断するのが右脳。その香りが何という種類の香りかを考えるのが左脳。

2)アルファ波
アルファ波は脳がリラックスしている、休んでいるときに出る脳波、この実験では、アルファ波が左脳から出ていれば、感情が高ぶり、活発に活動しており、右脳から出ていれば理性脳がしきりに働いていることが確かめられる。

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