●第7号(1997/5/25)――【10面】ハーブ&アロマテラピー『アロマの研究』
ここまで分かってきたアロマテラピーの効果

●東邦大学名誉教授
医学博士
鳥居鎮夫氏

1948年名古屋大学医学部卒
1955年東邦大学医学部助授
1972年同教授
1990年同名誉教授
★大脳生理学の権威として知られる



line.gif ●連載「7・最終回」
免疫力を高め、抗菌・殺菌する精油

 精油には免疫機能を高める作用があります。細菌やウイルスの増殖を抑え、同時にリンパ球の生産を高めて自然の防御系を補佐するのです。
 そこでストレスにより低下した免疫機能(注1)を回復させる実験をしました。
 マウスを15分間動けいないように拘束してストレスを与えました。すると免疫系の主役であるリンパ球の生産が低下します。そのマウスに揮発成分のアルファ・ピネン(注2)を嗅がせると、拘束ストレスにより低下した免疫機能が回復することを確かめました。
 アロマテラピーでは、昔から風邪を引いたときに精油を薄めた液でうがいするなど、精油の抗菌・免疫機能回復の作用を利用していました。
 また、アロマテラピーに限らず、民間の伝承療法や習慣の中にも、自然の殺菌力をうまく取り入れたものがあります。
 こうした作用は、単なる伝承ではなく、科学的に確かめられてもいます。
 植物は自身が傷つくと、周りの生物を殺す何らかの物質を出しているということを発見したのは、モスクワのトーキン博士です。今から50年前のことでした。博士はこの物質をフィトンチッドと名付けました。
 トドマツやイソツツジの葉を傷つけるとフィトンチッドが放出され、ブドウ状球菌、連鎖状球菌、ジフテリア菌、百日咳菌などを殺してしまいます。部屋にトドマツの葉を散らしておくだけで、部屋の細菌量が10分の1に低下したという調査もあります。
 その他、さまざまな植物、精油に抗菌・殺菌作用があることが確かめられ、注目されてもいました。ところが、こうした自然の成分への関心は、抗生物質の登場によって急速に沈静化していきます。
 そして近年、完全に医学が勝利したと思われていた抗生物質と細菌の戦い(注3)は、細菌の勝利で終わりそうな雲行きです。そこで、再び自然の成分への関心が高まっているのです。

(おわり)




注記
1)ストレスにより低下した免疫機能
ストレスを受けるとリンパ球の生産が低下。リンパ球は体内に進入した細菌など異物に対抗するためにあり、従って免疫力の低下を招く。

2)アルファピネン
植物から放出され、森林などに漂う香り物質の代表的なもの。

3)抗生物質と最近の戦い
黄色ブドウ球菌など、抗生物質の耐性菌が次々に登場し、さらに強い抗生物質を開発しても、すぐに耐性菌が誕生するイタチゴッコが続いている。

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